ご質問
無機塗料なら30年耐久(半永久)と言われたけど本当?
お答え
無機塗料についてはこちらのご質問でもありましたが、30年(半永久)に長持ちする塗料が有ると言われ、ご興味を抱くお施主様も少なくありません。
それも、「国内の塗料メーカーだから安心でメーカー保証も10年付きます」とも。
最近では、電話勧誘や訪問販売で無機塗料を勧めてくるケースが多くなったようでよくご相談を頂くようになりました。
中には自社開発したと言って無機塗料を使用している会社さんも有ります。
まず、この自社オリジナル塗料についてご説明いたします。
自社オリジナル塗料の全てに言えることですが、現在、大手住宅メーカーのメンテナンス塗装で使用されているオリジナル塗料は確かに色や中身の細かな成分などをオリジナルで製造されています。
国内大手塗料メーカーさんに頼んで製造を委託するいわゆるOEM商品になります。年間の製造ロットが数千缶に及ばないと大手塗料メーカーさんは委託を受けてくれません。
ところが、最近では数十缶からOEM商品の製造を請け負ってくれる塗料販売店が存在します。
ベンチャーの塗料メーカーに多いのですが、数ある類似する新商品の中で、優位性を持たせたいが為に、そして塗料が不良品だったとしても、使用方法に間違いがあると言ってしまえば、施工店側に責任を負わせる事が出来るため、非常に無責任な信憑性のない試験データを元に30年耐久と謳ってカタログに記載し、OEM商品を生産しています。
OEM商品ではなくても、流行の高性能を謳ったベンチャー系塗料メーカーに多い販促方法になっています。
そういった商品を全国展開している塗装リフォーム会社が使用していれば、お施主様は大きな会社の塗料だからと信頼して発注してしまい、出来上がりも悪くなければ満足してしまうようになります。
保証は10年程度が限度でしょうし、保証内容も色褪せや艶引けには保証していない事がほとんどですので、10年後に色褪せしてクレームを入れても対応してくれないでしょう。
実際に30年耐久する塗料が存在したと仮定してもデメリットが多い理由は?
コーキングとのメンテナンスサイクルのズレ
近年流行のサイディング外壁には目地にシーリング(コーキング)が使用されています。コーキング自体の耐久性は高耐候型でも15年前後です。
コーキングの上に塗装するからコーキング自体も長持ちすると言われる事もあるようですが、確かに一理ある説明なのですが、あくまでも紫外線劣化に関してのみの見解で、熱劣化などに関しては、表面の塗膜に関係なく劣化します。
15年耐久のコーキングが30年に延びる事はあり得ませんので、20年後にコーキングに隙間が出来てしまっては元も子もないはずです。
ひび割れ(サイディング壁やモルタル壁に多い)
最近の無機塗料は無機質だけでは割れると判ってきたため、有機物を加えて「無機ハイブリッド塗料」がほとんどになってきました。
建物の動きに追従できるように弾性特性を持たせたものになります。ですがいくら弾性特性が付与されたといってもそもそもは薄い塗膜です。
一般的な3回塗りでの無機ハイブリッド塗料を使用した程度では地震に対するひび割れを防ぐことは不可能に近いとお判りだと思います。
本当にひび割れを防ぎつつ長持ちさせたいのであれば、5回塗りになりますが、「JIS A6021 建築塗膜防水材」に準拠した無機ハイブリッド使用が適切でしょう。それでも20年耐久が限界だと思います。
近年の気候変動、巨大地震の関係
近年の地球温暖化による気候変動、いつ来てもおかしくない巨大地震を考えると、一般住宅に超高耐久塗料を使用して30年の期待をかけてもいいのでしょうか?
超高層ビルに使用する場合は、免振技術が発達しているため、建物自体の負荷は大幅に軽減されるようになりましたが、一般住宅は、耐震がほとんどのため、壁面に過度に負荷が掛かり外壁材が割れる事は避けられません。
美観性、低汚染性の限界
近年の高性能塗料は超低汚染性といって、表面に親水膜を形成し、汚れに対して自己洗浄機能に優れています。
ですが、雨あたりのない部分は、当然埃と一緒で汚れが蓄積されていきます。30年もその状態を我慢することになってしまいます。
もしくは、外壁の洗浄だけの為に足場を組まなくてはならないかもしれません。塗りたての美観性が30年間続くわけではないので、実用的と言えるでしょうか?
塗料の本質と実用性を加味した上で、塗料の選定が必要だと考えております。